第11章 二度目の新婚旅行、の巻
兄が新しい身代わりを探し始める前の晩
裏庭から土を掘り返す音が聞こえ、窓からぼんやりランプの薄明かりが見えて
それらが、彼女を不安にさせた
兄が新しい身代わりのリョウを探し始める度に増える、裏庭の十字架
そして姿を見せなくなった身代わり達…
…それが意味する所は言うまでも無かった
唯一の肉親である父を亡くし
優しかった兄は狂気の殺人鬼に変わってしまった…
その彼女の悲しみは、言い尽くせる物では無いだろう
だけどアリスは
せめてこれ以上兄が罪を犯さない様に
せめて可哀想な被害者を慰める為にと
毎日裏庭の墓標に花を手向けて祈りを捧げていたのだ
そして、僕を見つけてくれたのだった
「サトシハ、ブジニ、カエシテ、アゲマス」
碧い眼を揺らしてそう言ってくれたアリス
「…でも、それじゃまたきっと別の誰かが犠牲になっちゃう…」
僕は柔らかな金髪を撫でながら、僕に何か出来る事は無いかと考えていた