第11章 二度目の新婚旅行、の巻
「…可哀想に」
僕は泣き腫らした目を閉じて眠る少女の髪を撫でながら呟いた
あの後、僕は彼女から更に詳しい話しを聞いた
事の始まりは、二人の若者の恋
そのれが余りにも悲しい終焉を迎えた事が原因だった
リョウと言う青年に心を奪われたアリスの兄は、彼に愛を告げた
彼もすぐにその愛に応えて、二人は深く深く愛し合う様になった
だけど、伯爵家の後継ぎに男の恋人など許される筈も無く
彼らは兄妹の父である伯爵によってその仲を引き裂かれた
そして悲しみに暮れたその青年は、服毒自殺を図って亡くなってしまったのだ
その時から、彼女の兄は正気を失ってしまった
優しく穏やかだったその人は、人が変わってしまった様に恐ろしい暴君となり
沢山居た使用人たちも耐えきれずに次々と辞めて行ってしまった
そんな息子の豹変ぶりを見て、彼らの父は己を責め悔み
元々悪かった心臓を患って、あっという間にこの世を去ってしまう
後に残されたのは、僅かな使用人と腹違いの妹のみ
彼女の兄は、益々正気を失って行った
…そうして、正気を失った彼は「リョウは必ず蘇って僕を迎えに来る」と言い出し
ある日とうとうリョウに良く似た日本人を攫って来て監禁してしまったのだ
だが、当然彼はリョウではない
暫く身代わりのリョウのカラダを弄んだ後
彼女の兄は「彼はリョウじゃない、偽物だった」そう言って、また新しい身代わりを探し出したのだと言う