第11章 二度目の新婚旅行、の巻
僕を誘拐して来た人は、この城の主で、若くして家督を継いだらしい
彼は、彼女の腹違いの兄なのだと言う
家督を継ぐ前に、彼は予てから興味があった日本について学んでいたそうで
その時に日本語の教師としてこの城にやって来たのが「リョウ」と言う、若い日本人の男性だったと言うのだ
「トテモ、キレイナ、ヒト…アニハ、コイシタ、スグニ」
「でも、許されなかったんだね?」
「ハイ…ソシテ、シンダ…ドクヲ、ノンダ」
「……」
アリスは悲しそうに綺麗な碧い瞳を揺らしながら言った
「アニハ、サガシタ…リョウノ、カワリ…ニホンジン、サラッタ…ミンナ、イナクナッタ」
「居なくなった?」
「…アソコ」
アリスは立ち上がると、窓の外を指差した
僕も立ち上がり窓際まで行って指し示す方を見た
「…こ、れは…」
其処は、さっきの小屋の裏の様だった
そして、其処には、点々と白い十字架が…
「…まさか…これって…」
「アニガ、コロシタ…ミンナ、コロシタ…」
アリスのついた深い溜め息が、窓を白く曇らせた