第1章 動物苦手な彼女と動物好きな彼
—椿姫sideー
私の名前は神崎椿姫。
私は動物がとても苦手で、近寄って来る仔犬とかにも
普通に驚いてしまう。
何故動物が苦手なのかと聞かれると、答えられないのだけど
とにかく動物は苦手だ。
反面、私と同じクラスのある男子は、とても動物好きで
虫とか、色々な動物の飼育の事にとても詳しい。
彼の名は『竹谷八左ヱ門』と云って、気さくで話し易い人。
動物の話になれば、止まらなくなる程の動物好きとして
とても有名。
だから私はとても彼が苦手なのだった。彼自身というより
彼の動物好きな性格が…だけど。
「はぁ…竹谷君て、本当動物好きな優しい人だね。」
「…そだね。」
私の目の前で、じっと竹谷君を見つめる友達はまさに
恋する乙女そのものである。高校に入ってから
竹谷君の動物への優しい性格に惚れ込んだと言ってた。
「椿姫はどうしてそんなに竹谷君が嫌なの?」
「いや、竹谷君が嫌だとかじゃなくて…」
「動物好きで、結構女の子から人気あって素敵じゃない?」
友達はそう言うが、私はどうしても竹谷君とは話せない。
高校に入ってから、一度も話したことなど無い。
それに、『動物好き』に色恋などという感情は
あり得ないとしか思っていなかった。
「竹谷君に告白したいけどさ~…出来ないんだよ~」
「ふーん…。すれば良いんじゃないの?」
「うわ、出たよ。他人事コメント。酷いね~?」
友達はそう少し怪訝そうな表情を浮かべて言った。
『だって他人事でしょ?』と返すと、友達は溜息を吐いた。
「あんたね、高校3年生にもなって、彼氏居ないとか無い。」
「彼氏って…」
「それともさ、誰か好きな人居るの??」
そんなのいる訳無い…。私はそう思ったんだけど、不意に
彼女に『いる』と言ってしまった。
「え?誰?!」
「え?えーっと‥‥、く、久々知君…かな?」
「え?めっちゃかっこいいじゃん!へぇ~。」
そうやって、私と友達は盛り上がっていた。
まさか…その話が竹谷君の耳に入ってるとも思わずに…。
私の言ってしまった、デマ情報は友達以外の女子にも
知れ渡って行き、私は大変な目にあうようになるのを
知る由もなかった…。