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満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】

第45章 もう一度の初恋を《宇髄天元》





17歳男子高校生。部活中の走り込み中に足背部の疼痛、腫脹。
送られてきた電子カルテ上の情報を素早く読みとる。おそらくレントゲンの検査が必要だから、自立歩行できないときのために念の為に移送用の車椅子を準備した。

「佐伯みなとくん?で合ってるかな。
1人?保護者の方は…」

救急外来の中待合に座っている男の子に声をかける。紺色のランニング用のTしゃつに、短パン、足首はアイシングをしている若い男の子。すぐにこの子が新患の佐伯くんだとわかった。

「…今先生がお母さん…母と、電話してます」 

担任の先生か、学校の関係者が生徒を連れて来たのだろう。佐伯くんは落ち着かない様子だった。

「そっかそっか。じゃあ佐伯みなとくん、どんな風にして痛めたのか教えてくれるかな」
「あ、はい…」

顔が緊張で少し熱っている。微かに震えながら不安気には話すその様は、年相応の幼い男の子だった。

電子カルテに時系列に起こったことを記入して、患部の様子を見ようと屈んだ。

「ごめんね、このアイシング、ちょっと外してみても良いかな」
「はい、…大丈夫、です」

アイシングしていたタオルを外すと、微かに発赤していて腫脹もある。押せば痛いと訴えもある。捻挫にしては腫脹が大きいのでやはりレントゲンだろう。
医師に報告できるよう電子カルテにさらに記入を進めた。


「佐伯!今お母さんに連絡ついて、こっちに向かうって。大丈夫か?」

電子カルテに記入していた手が、思わず止まってしまった。その優しくも低い声を、前にも聞いたことがあったから。聞き間違えるはずなんてない。忘れるはずなんてなかった。硬直してしまった身体を、手を、どうにか動かしてマウスをカチリと操作する。

男子生徒は大丈夫ですと彼に話していて、これからたぶんレントゲン、と話している。

「ーーすいません、お手数をおかけしま、」

わたしの顔を覗き込んでお礼を言う彼は、は、と目を見開いた。

「…澤村?」

気づかれてしまった。
マスクをしているのに、わたしが誰だかわかったみたいだ。

「…お久しぶりです…宇髄先生」


彼はわたしの初恋の人で、そして初めての恋人だった。


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