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満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】

第45章 もう一度の初恋を《宇髄天元》








男子生徒は、足先から足首まできっちりと固定をされて、慣れない松葉杖で診察室へ入ってきた。
手狭な診察室に医師の向かい合わせで男子高校生、その後ろに宇髄先生。そしてわたしは医師の後ろに立った。
診断はやはり足背部の骨折で、アスリートによくある疲労骨折だった。

説明を受けながらもただ始終黙っていた男子生徒が、口を開いた。

「2週間後に引退の大会があるんです。それまでに治りますか」

骨折は2週間では治らない。
先ほど元の通り回復するまでおよそ2ヶ月だろうと説明したが、届いてなかったみたいだ。
焦るような不安気な様子の男子生徒に突きつけられた現実に、彼は顔を俯いて、微かに震えていた。

診察は終わって、宇髄先生に支えられて退室する男子高校生の背中は、がっくりと項垂れているようだった。


まだ外来に来ている患者はいて、波奈は電子カルテが乗った台を動かしながら次へ次へとまた問診に行く。
待合へ行くと宇髄先生が男の子の背中を大きい手で撫でていた。
腕で顔を覆い、おそらく涙している生徒に、宇髄先生は優しく声を掛けていた。

「大丈夫だ」
「これからだっていくらでも陸上はできる」
「お前はまだ若い」

嗚咽しながら必死に涙を拭う生徒に、彼は寄り添い声を掛けていた。

『お前はまだ若い。これからいくらだってーーー』

遠い記憶が鮮明に頭から呼び起こされて、胸がきゅうと締め付けられた。



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