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満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】

第43章 「そう言うことは早く言え!」※《宇髄天元》






東京、某所。波奈は不安気にスマホの地図アプリと睨めっこして、ようやく行き先に辿り着いた。
心臓がやたらと煩い。
苦労して取った、若き絵画アーティストの個展のチケットを握りしめた。

アートギャラリーの入り口に、大きくポスターが掛けられていて、宇髄の真剣に真っ直ぐとこちらを向く顔でさらに胸の鼓動が鳴った。

震える手をどうにか鼓舞してガラス扉を開け、ふらふらと受付へと向かった。

シンプルな内装だが掛けられている絵はあの人らしく色彩めいた派手な抽象画が多かった。
それだけで泣き出しそうになるのを必死でこらえながら、次へ次へと絵を見ていく。

奥へ続く部屋へと踏み入れると、誰もが目を引く、背が高くてスラっとしたいで立ちの男が後ろ姿で立っている。男はスタッフやお客さんと談笑している。
正面を向かなくてもわかった。日に当たると銀色の髪色が透けてアイスグレーのような柔らかな色になることを波奈はしっかりと覚えていたから。
足も手も緊張で震えてしまって、持っていたパンフレットをバサバサと落としてしまう。
慌ててそれらをしゃがんで拾い上げていると、いきなり肩を掴まれて上を向かされた。

見上げるとそれは1番会いたかった人の顔だった。戸惑いと疑いと、少し泣き出しそうな不安げな宇髄天元は、声を詰まらせている。

「…あ、えっと、…っ」

何か言わなくてはと思って波奈も泣き出しそうになり、震える声で「天元さん…」とどうにかこうにかそう言うと、そのまま引っ張られて宇髄の胸の中で苦しいほど抱きしめられた。

ーーーーやっと会えた。
会いに来てくれたんだな、ありがとな。
そう言って抱きしめるのを辞めない宇髄にあたふたしていると、驚いたスタッフの方がじろじろと見てくる。
お客さんもざわざわしてしまって、振り解こうかと思ったけどびくともしなかった。
前世と変わらずに馬鹿力で鍛えているらしかった。

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