第20章 彼女の能力
「・・・・・・なぁ、なんでお前は、ゴール・D・ロジャーと呼ぶ?」
「違うの?」
「・・・いや、あってる。だが、皆ゴールド・ロジャーだと思ってる。この時代に、本名を知るやつなんてほとんどいねぇ」
「・・・・実はね、会ったことがあるの」
「!?」
ザアァァァァと降り注ぐ雨のなか、エースはガバッとユキの背から両腕を剥がすと、その両肩に手を置きその瞳を真正面から睨め付ける。
「会ったことが・・・ある、だと?どーゆー意味だ、お前はまだ生まれても無い頃だぞ、処刑されたのは」
「・・・・私の、能力」
「!・・・お前の、能力?」
「・・・・なんとなく、わかってるんじゃ、ないかな」
そう言うユキは、俯いた。エースはユキの言葉を聞きながら、今までのことを思い返す。そうだ、こいつと初めて会った時、妙なことが2度起きた。
そう。あれはまるで・・・・
「時間が・・・戻ったみてぇな」
「・・・・・」
沈黙は是也。雨音しか聞こえてこない中、ユキはその顔をあげた。
「『メグメグの実』。私が食べた、悪魔の実の名前です」
「メグメグの、実?」
「・・・正確には、『巡廻』・・・『時を巡り、輪廻を巡る』能力」
「!!!」
初めて聞く悪魔の実の能力に、エースは驚愕した。そんなものが存在してしまえば、歴史も、輪廻も、全てこいつの思うがままに動かせるんじゃ無いのか。そう考えたのだ。
「じゃあお前、弟、生き返らせれるのか!?」
だが、エースの意に反して、ユキは少しだけその頭を振った。
「エースの考えるような、大それたことはできない。私は、ただの傍観者。時や輪廻を巡っても、私には何かを変えるような力はないの。変えられるとするなら、たったの5秒だけ。だから、最初に会った時5秒だけ時間を戻して、エースやおじさんを助けようとした」
「5秒・・・・それでもすげぇ」
なるほど、だからあの時、エースは妙な既視感を感じたんだ。納得すると同時に、そんな能力を持っていたことに感心する。
「じゃあ、その能力で、海賊王に会ったのか?」
「・・・そう、その時に、ルージュさん、ロジャー、2人に出会った」