第13章 本当の名は
ゆらゆらと揺れるカーテンから、そよ風とともに眩い光が入ってくる。
三日間の看病の末、ようやく明け方に熱の下がった女に、ホッと胸を撫で下ろしたエースは、そのままベットに突っ伏し眠ってしまったみたいだ。その光が顔にかかり、目を覚ます。
「・・・・・?」
あいつ、どこ行きやがった?
先刻までそこで眠っていたはずの女の姿がなく、またかよ、と言いながらも立ち上がる。
この島からは出ていないだろうから、その辺にいるだろ、と思いながら自身にかかっていた毛布をベットへ戻し、探しに出る。
森の奥にあるこの古屋を抜けると、そこには滝とともに綺麗な川が流れている。そしてさらに奥へ進むと、島の端へとたどり着く。
「!・・・こりゃ、すげぇな」
思わず呟いたエース。そこは、あたり一面の花畑。
そういや、ここは春島。気候が安定しているからか、さまざまな植物が生えているなと思ってはいたが、こんなに綺麗な花畑を、今までエースは見たことがない。そう一瞬で思えるほどの景色がそこにはあった。
実の所、ずっと看病していたためエースもこの島を全部見て回れていない。その満開の花畑に咲き誇る花の名を、エースは知らないが、その奥に一本だけ咲く大きな木の名前は知っていた。
「桜か・・・」
満開のピンクの花を咲かせる気、桜。向こうに見える海がキラキラとしていて、絶景だった。
エースが思わずその景色に見惚れていると、バシャ、とどこからか水の跳ねる音が聞こえた。
音のした方へ足を向けるエース。