第11章 辿り着いた島
「目ぇ覚めたか。『ユウ』・・・?」
「・・・・・?・・・ッ」
未だぼんやりと焦点の合わない瞳が至近距離でかち合う。あれ、とエースはどこか違和感を覚えるが、小舟の主であった『ユウ』は、すぐにエースの背の上にいることを把握し、ジタバタと暴れ出した。
「!お、おい暴れんじゃねぇ落ちるぞ!!ほら、おろしてやるから落ち着け」
そう言うと『ユウ』は大人しくエースの腕におろされる。
しかし、そこから降りた瞬間バッとエースのそばから離れ、扉の前まで距離を取る。
それを呆れたように見届けたエースは、警戒しながらこちらを睨みつける『ユウ』を見て、「まるで野良猫だな」と呟きベットへと腰を降ろす。
「・・・・・」
あちらこちらへと視線を彷徨わせ、毛の逆立った猫のように、確実にその背景に『シャー!』という効果音が付けられるだろう『ユウ』を見ながら、エースは口を開いた。
「あのさ、一個ずつ聞いていいか?」
ビクリ、とその声に反応した『ユウ』は、未だに状況を収集できていないのか、先ほどまでの警戒した様子から、うるうるとした瞳で窓を見つめ出した。
それを見たエースは、どうにも自分がいじめているような気分になってため息を吐く。
「・・・・あー、わかった、わかった。状況を教える。まず、俺とお前が昨日の夜に津波に飲み込まれたのは覚えてるか?」
「・・・・」
こくり、と頷かれるのを見てエースはつづける。
「その後、ラッキーなことにこの無人島の浜辺に打ち上げられたんだ。俺もお前も能力者だったからな、島に流れ着いてよかった。・・・で、この島には俺たち以外誰もいない。幸い、食べ物も飲み物も、こうして寝場所もあるし、気候も春みたいだ。飢えることも、凍死することもないだろ。俺かお前、それか両方の運がよかったんだろうな。」
そこまで言ったエースは、一旦言葉を切る。昨夜の記憶が蘇ってきたのだろう、みるみるうちにその顔が青くなっていくのがわかったからだ。その様子をじっとエースは見つめる。
頭を抱え込むあたりそろそろ状況収集は終わったみたいだな、と思いこれからのことを切り出そうとした瞬間。