第22章 さよなら。
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ギシギシと、首を締め上げる音が
消えかかった意識の中にこだまする
僕の上に、のしかかる彼の顔が
霞んで見える
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(……翔くんが…待ってるんだ……
……僕は……今……
……死ぬ訳には…いかないんだ……)
何とか意識を保とうとする僕の首を
彼の手が、容赦なく締め上げる
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───苦しい
───息が出来ない
───意識が…途切れそう
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(…潤 くん…もう止めて……もう…止めようよ……こんな事…)
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何時も苦しかった
愛されれば愛される程
ねぇ…それは、きっと
……潤 くんも同じ
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…だから、もう……
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僕は途切れそうな意識をなんとか保たせて
潤 くんの頬にそっと触れた
「………!!」
締め上げていた痛みが瞬間緩まる
「……も…もう……やめ…て……じゅ…く……」
(やめて…自分を…追い込まないで……これ以上…自分を……苦しめないで)
僕は何とか口の端を上げて笑顔をつくった
(…お願い…潤 くん……もう……)
「…さ…智…」
「——ッゴホッ!ゴホゴホッッ」
止められていた息が一気に気管に流れ込む
「…智…さと…し…俺…」
潤 くんは震える両手を見つめている
その大きな眼からは止めどなく涙が溢れ出している
「……俺は……」
僕はクラクラする頭をやっとの思いで上げると、彼を優しく抱きしめた
「…もう…いいんだ…潤 くん…もう止めようよ」
「智…」
(…頭がくらくらする…意識が持っていかれそう…でも…
…翔くん…お願い……僕にチカラを…)
僕は大きく息を吸い込んだ
(……翔くん……)
ゆっくり息を吐きながら、僕は彼の頬を両手で包んで優しく語りかけた
「…もう…終わりにしよ?
…こんな事…」
「…嫌だ……俺は……智は…智は、俺のモノだ……」
潤 くんは、うわ言の様に呟いた
「…俺の…俺だけの…」
僕は、虚ろな彼の眼を、真っ直ぐに見て言った
「……じゃあ、潤 くんは、誰のものなの?」
「え………?」
焦点の合わなかった彼の瞳が、僕を捕えた
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