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—L'Oiseau Bleu— 青い鳥

第22章 さよなら。


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僕はもう一度大きく息を吸い込むと

その息と一緒に溜っていた想いを吐きだした


「…潤 くんは僕のものじゃない」

「…智…俺は…」

「僕は…潤 くんのものじゃない」

「………」

「…ねぇ、僕らは…モノじゃないんだ…」


潤 くんはじっと僕を見つめている


「…奥さんを幸せにしてあげて?

…産まれてくる命を…大事にしてあげて」

「………智…お前…」

「潤 くんが、僕以外の人を選んだ時…ホントはこうするべきだったんだ…

…でも出来なかった…」

「………」

「…僕は…ずっと怖かった…

…潤 くんと離れるのが…


………でもね」


僕は潤 くんの眼を見つめた


僕の大好きだった人

僕を狂おしい程に愛してくれた人


「僕は見つけたんだ…

やっと…心の底から嬉しいって思える気持ちを…」

「……」

「…僕ね、彼といると嬉しいんだ…

…いつも、気が付くと笑ってる僕がいて…笑ってる彼がいて…

…彼が居ると…彼が傍にいてくれるだけで…

…それだけで、嬉しいんだ…幸せなんだ…」

「…俺と居る時は…幸せじゃ無かったのか…?」


僕をじっと見詰めていた潤 くんの顔が、辛そうに歪む

僕は、そんな潤 くんのコトを真っ直ぐに見つめ返しながら言った


「…幸せだったよ…

…少なくとも…潤 くんのマンションに二人で暮らしてた頃は…」


…そう…


2人が、ただの恋人同士で居られた、あの頃はまだ…


……でも


「何時からか…

…何時も寂しくて…怖かった…

…僕には…何も無くて…未来なんか見えなくて…

…いつ死んだっていいって思ってた」

「……」

「…でも…彼に出逢って…

…生きてれば…僕にもこんなに幸せな時間があるんだって…

…こんなに嬉しい事があるんだって…

…彼が、教えてくれたんだ…」


潤 くんは黙って僕の話を聞いている


「…そしてきっと…

…潤 くんにその幸せをあげるのは僕じゃない…

…奥さんと、産まれてくる赤ちゃんなんだ」


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