第17章 始まりの過去2
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「………………」
悪夢の様な時間が過ぎて
僕は服が裸けたまま、テーブルに凭れて放心していた
“その人”は、満足そうにそんな僕を眺めている
(………なんで、こんな………なんで………)
焦点の合わない目から、涙がだらしなく零れ続ける
と、“その人”が急に慌てた声を出した
「…な、なんだ、お前っ?!」
「…………?」
ゆっくりと振り向いて、その視線の先を見ると
店の入り口で、彼が真っ青な顔で立っていた
「!!……まつ……も、と……くん…////」
叫び過ぎて声が擦れる
その情けない掠れ声を聞いて
青ざめていた彼の顔が、みるみる赤く上気する
「…てんめぇっ…智に何しやがった!!」
「ぅわぁっ!!」
彼が“その人”に掴みかかって、そのまま揉み合いながら店の奥に傾込む
厨房でガランガランと派手な音がする
「ぅっ……ま、つもと……くん////」
僕はそこら中が痛む体を起して、何とか服を整えながら奥へ行った
と
揉み合う二人が離れた瞬間、松本くんが手元に落ちていたナイフを掴んだ
「Σ松本くんっ!!」
「てんめぇっ…絶対許さねぇっ!!」
「Σひっひいっ!!」
松本くんの迫力に“その人”が後ずさる
「ダメだよ!松本くんっ!」
「ぜってぇー許さねぇっ!!!」
すっかり頭に血が上っている彼には、僕の声すら聞こえない様だった
ナイフを持った手に力が入る
(ダメだ!間に合わないっ!)
僕は体ごと彼に飛びついた
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