第17章 始まりの過去2
.
.
.
「お疲れさまでした」
一日の仕事が終わり、僕は一人、店の掃除を始めた
店長はそんな事は他のバイトにやらせるから、やらないでいいって言ったけど
僕は掃除をするのが好きだったから、いつも仕事が終わると、一人で残って掃除をしていた
汚れた床をピカピカにすると、気持ちまでピカピカになる
—purururu...purururu...
モップで床を磨いていたら、携帯電話が着信を知らせて鳴りだした
「誰かな、こんな時間に」
もう、午前三時過ぎ
普通の人は寝ている時間だ
手にした携帯に“松本潤 ”の文字
(え?)
どうしたんだろう?こんな時間に…
「もしもし?」
『もしもし?潤 だけど、今、大丈夫?』
「うん、もう皆帰って、掃除してるとこ」
『そっか、で、どうだった?辞められそう?』
「…もしかして、それ聞く為に、わざわざ…」
『当ったり前だろ!気になって落ち着かないんだよ』
「松本く………!!!」
僕は、言葉を失った……
居るはずの無い人が
其処に居た
.
…それは…
.
「………君が居なければ…意味が無い……君じゃなければ……意味が無い……」
.
“その人”が
其処に、立って
.
暗い眼で、僕を……
………視ていた
.
「!!!!////」
「……君が居なければ……君が……」
“その人”は、ぶつぶつ言いながら僕に近づいてくる
僕は怯えて、じりじりと後ずさった
『…智?どうした?智??』
電話口の松本くんの声にハッとする
「Σまっ松本くんっ!まつ……ッ!!」
僕は“その人”に、携帯を持った腕を掴まれた
「Σいっ…!!」
手首に“その人”の指が食い込んで、僕は痛みの余り携帯を落としてしまった
.