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—L'Oiseau Bleu— 青い鳥

第17章 始まりの過去2


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「銀座のクラブでバイトしてるって、ホント?」


(だから、君の情報網どうなってんの?!)


今日は文化祭最終日

僕は最後まで残って、松本くんと看板の飾り付けを片付けていた


「んん〜…校長先生には黙っててよ」

「…客に誘われたりしてないの?」

「な、なに言ってんの、僕ギャルソンなんだから」

「ふぅーん…俺だったら放っとかないけどな」

「そりゃ、エロ潤 はそうだろうけど」

「エロ潤 言うなよ」


相変わらず彼は、僕の事を追いかけまわしてたけど

最近ではすっかり馴れてしまって、僕は逃げ回るのを諦めた


「何か困った事あったら俺に言えよ」

「はぁーい」

「…お前さ、ホントに解ってる?」

「はぁーい」

「…解ってねぇな」

「はぁーい」

「ちぇっ…もういいよ」


彼はチョット拗ねて乱暴にペーパーフラワーを看板から剥がした


美術室に乱雑に置かれた看板は、二人でやるには多すぎて、一向に片付かない


「…なんか、終わんないねぇ…クイーンにも手伝ってもらえば良かった」

「無理だろ、ニノは」


松本君は面倒くさそうに造花を放り投げた


「クイーンが居なきゃ、後夜祭、盛り上がんないだろ」

「…なんか、嫌がってたけど?」

「そうか?俺には喜んでる様に見えたけど?」


彼らの学校は男子校だけど、何故か毎年文化祭で、クイーンを決めるコンテストがあって

自薦他薦で選ばれた候補者が、女装してクイーンを競い合う


…で、我らがアイドルわんこニノは、三年連続でクイーンに選ばれたわけ


「三年連続って、史上初だってさ」

「僕のわんこちゃんなら当然でしょ!」

「俺は断然、智が良かったのになぁ」

「僕は、これでも先生なの!先生は、ミスコン出ないの!!」

「けど、智にもスゲー票が入ってたんだぜ、エントリーしてないのに」

「あ、ニノに聞いた。

なんか、大宮コンビでも票が入ってて、全部ニノの得票になったって」

「…お陰で断トツ一位だし」


僕らは顔を見合わせて笑い合った


.


.


…この時僕らは、気付いてなかったんだ


長閑な幸せが、終わる時が


…静かに…確実に…


.


…僕らの背中に、迫っていることを…


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