DIABOLIK LOVERS-My blood-
第18章 血雫 18
「はぁ…何でキスぐらいで泣くわけ?別に減るもんじゃないだろ」
本当に鬱陶しそうな声音でそう言うシュウさんに、私は少しだけ怒りを覚えた。
「は…初めてだったんです…!私は…ファーストキスは大好きな人とするって決めてたのに…!それなのに、突然好きでもない人に奪われて、悲しくないわけないでしょう!?」
一気にまくし立てると、次から次へと涙が流れ落ちる。そんな私に、シュウさんは若干の驚きを混じえた様な顔で溜息をつく。
「だから泣くなって…面倒だから…でも、驚いたな」
そう呟きながら、シュウさんはその長く綺麗な指を此方に伸ばし、私の目尻に這わせた。
「お…驚いた…?何にですか」
絶対に涙なんか拭ってくれそうもない人だな、…なんて思っていたのに、私に触れたその指は意外と優しくて、ほんの少しだけ、彼を許してしまう。
声を和らげて、私は問うた。
「俺に…っていうか、逆巻の家のヤツにキスとかされて悲しむ様な女はいなかったんだよ…大体の女は俺達の顔、金、頭目当てで寄ってくるからな。だから拒否されるのが新鮮で驚いた。…あとあんたが……そう言うのが目当てじゃない、ってことも分かったしな…」
そんな事言われたら…反論なんて出来なくなってしまう。
それもこれも、実は全部彼の計算なのかも知れないけれど、それでも怒りと悲しみは、コントロール出来るまでに収まってしまった。
「それに…好きでもない奴にキスされたくないんだったら…俺のことを好きになれば済む話だろ…まぁあんたは俺を選んだんだし、元々拒否なんてする権利、ないんだけどね…」
綺麗な蒼い瞳を細めて、ククッと笑いながら呟く彼に少しだけ見惚れていたのは、私だけの秘密。
それでも、正直になれない不器用な私は、近付いてくる彼を押し退けて引っ張る。
「もう、本令鳴っちゃいますから!!行きますよ!」
と、背後から明らかに不満そうな声が聞こえてくる。
「何だよ…さっきまで俺にキスされて嫌だ嫌だって泣いてたくせに…」
そんな私を立ち直らせたのも、貴方なんだけどな。