第10章 東京卍リベンジャーズ・三ツ谷隆
欲を吐き出した膜を外し
レイナの身体も綺麗にして
グッタリと脱力している彼女の隣に寝そべる
腕まくらをするようにして顔を覗き込むと
虚に彷徨っていたレイナの視線がオレをとらえた
「………チョット無理させたな……ゴメン…」
そう言ったオレにレイナは微笑み
小さく首を横に振った
乱れてしまった髪を整えるように指を滑らせていると
腕の中から小さな声が聞こえた
『………隆…………何かあったの…?』
その言葉に
髪を梳く指が止まる
「…………………大丈夫だ……」
オレは一言だけそう答えて
微かに汗ばんだ彼女の額に口付けた
今夜、武蔵神社で
愛美愛主との抗争が予定外に勃発し
争いの最中
ドラケンが刺された
一時、意識不明の状態にまで陥ったドラケンは
手術を受け
何とか一命を取りとめたが
仲間の命が失われてしまうのかもしれないと
待っている間は本当に怖かった
人なんて
一歩間違えれば簡単に死んでしまう
覚悟なんてものは
とっくに出来ているつもりだったけれど
今夜
自分が選んだ道の厳しさを
まざまざと見せつけられた気がした
このまま突き進んだ先で
仲間の誰かが死ぬかもしれない
取り返しの付かないことになるのは
自分かもしれなかった
目を閉じると
パーちんが捕まったことを知らされた時の
レイナの哀しそうな顔が浮かんだ
今度は自分のせいで
大切な人を
また泣かせてしまうかもしれない
大切な人を
傷つけてしまうかもしれない
大切な人を
レイナを
巻き込んでしまうかも知れない
オレは
それが一番怖かった
けれど
現実に目を向ければ
全てがあり得ることだった
髪に絡ませたままの指が
微かに震えていることに気が付いたのか
レイナは顔を上げると
体勢を入れ替えて
オレに腕まくらをした
「……っ…」
優しく抱き寄せられるまま
彼女の香りに身を委ねる
胸元に耳をあてると
確かな鼓動が聞こえた