第1章 出会い
彼は無言で、少女に自分の着ていた上着を着せる。
不思議そうにしながらも、少女も無言で袖を通した。
まだ熱が残っているそれに、少女は驚いた顔をした後
ふわっと嬉しそうに笑って、ぎゅっと自身を抱きしめた。
その光景を、少しだけ観察した後
彼は近くの水の入ったコップを少女に手渡した。
それを受け取った彼女は、じっと中の水を見つめた。
「それを飲んだら行くぞ。」
暗に早く飲めと指示して、少女をじっと見つめる。
少女は少しだけ表情を曇らせながら、中身の水を飲みほした。
手に持った空になったコップをサイドテーブルに置きながら、少女は意識を失った。
水の中に、即効性の睡眠薬を入れておいた。
少女のあの表情を見る限り、それに気づきながら飲み干したのは想像が出来た。
倒れている少女を肩に担いで、そのまま階段を降り屋敷を出る。
用意してある車の助手席に少女を寝かせて、防寒用にと持ってきていた毛布を掛けた。
すやすやと無防備に眠る少女の顔には、少しだけ眉間に皺が寄っていて。
そこを手袋を嵌めたまま、トンっと人差し指で小突く。
すると、少しだけくすぐったそうに体を捩って反応を示した少女に、彼は薄っすらと口角を上げて笑みを作った。
さて、最後の仕上げをしてこなければ。
車の施錠を確認して、彼は屋敷からすべての証拠を消すために再度屋敷へと体を向けた。