夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第3章 爪先ほどの想い(i7)完
涙を止められない私に、六弥さんが寄り添って、ハンカチを差し出してくれた。
私はそのハンカチを、震える両手で受け取り、目元に当てる。
こんなに泣いているのに、私の喉から出るのは、息継ぎの音だけ。
それを不思議に思われているはずだろうに。
六弥さんは、私が落ち着くまでずっと待っていてくれた。
六弥さんは、ただ黙って、優しい手で、私の背中をさすり続けてくれている。
まるで、夢のような時間に思えた。
私はきっと、化粧が落ちてボロボロの顔をしているのだろうから。
恥ずかしい気持ちも確かにあって。
でも、この上なく嬉しくて。
私は六弥さんの恋人には、なれないから。
一生、なれないから。
私が六弥さんの友人としてなら、隣に居る事を許されるのだったら。
私は、少しでも六弥さんと一緒に居たい。
友達でもかまわないから、六弥さんの傍に居ていたい。
それは少しほろ苦さのある関係だけれど。
私は、六弥さんとただの他人になるのは、もう、嫌だから。
今だけは、何もかもを忘れて、六弥さんの腕の中に居たい。
それは不純な下心だけど、今は、今だけは、このままで・・・・・・。
私が泣き止むと、六弥さんは安心したようなため息をこぼした。
心配かけてごめんなさい。
手話で六弥さんに伝える。
六弥さんは手話で返してくれた。
――私と貴女は友達。当然の事をした。それだけ。
友達。
そう、友達。
それで良い。
私は六弥さんにとって、沢山の友達の中の一人に過ぎないのだろうけれど。
今は、それでも良いから、傍に居させてほしかった。
友達なら、お互い歩み寄れる。
信頼も出来る、心配もできる。
何かあったら、駆けつけられる。
六弥さんが今、私にそうしてくれているように。
私も六弥さんに、いつかそうしたいから。
この恋が実る事は無い。
けれど。
私の想いはもう、爪先くらいの小さな物じゃないから。
お見合いの話は、両親にちゃんと言って断ろう。
「いいえ」を言える人間になろう。
そしていつか、もし、私に自信が持てる日が来たら。
六弥さんに。
この想いを伝えよう。
好きです、付き合って下さい、と。
両腕一杯の愛を胸に抱えて。
「爪先ほどの想い」完