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夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】

第3章 爪先ほどの想い(i7)完


 私と六弥さんは、それから少しだけ手話で、他愛もない会話を楽しんでいたけれど。
 上司の人は、それが面白くなかったらしく。
「おい! 駆け出しアイドルごときが出しゃばってんじゃねぇよ! それに、手話だからって俺の悪口を言ってんじゃねぇ! バレてんだよ!」
 上司は完全に頭に血が上っているのか、まくし立てるようにそう叫んだ。
 見当違いにも程があると思うけれど、上司は手話が分からないのだから、仕方がないのかもしれない。
 それでも、六弥さんの事まで下に見られるのは、とても悪い気分だ。
 私は上司の前に進み出て、スマホを取り出し、文字を打ち込んだ。
 ――今の六弥さんを冒涜した発言、撤回して下さい。それに、私達はあなたの悪口なんて一言も話していませんから。
「はあ? 部下のお前に何の権限があって、俺に口答えしてんだよ! 俺の事を馬鹿にしやがって! 一度痛い目見ねえと、分かんねえのか、お前は?!」
 そう言う上司の拳は、既に私に向かって容赦なく振り下ろされようとしていて。
 私がとっさに両腕を顔の前に持ってくると。
 ――パシン!
 と、音が聞こえた。
 痛くない。
 無意識に閉じていた両目を開けて、私が目の前を確認したら。
 六弥さんが、上司の右腕を後ろから強く掴んで、離さずにいてくれていた。
 私は、驚いていた。
 六弥さんが上司を見る目は、ナイフよりも鋭く、深海よりも冷たかったから。
 私は、そのあまりにも恐ろしい六弥さんの瞳に。
 その場で腰が抜けてしまって、床に内ももが着いてしまった。
「この! 離せ!」
「いいえ。ワタシはこのまま、ハダ氏にアナタを引き渡します! 彼女を侮辱した上、暴力まで振るおうとした事、決して許せるものではありません。来なさい」
「くっ! やめろ! 離せ! 話はまだ終わってない! 香住、俺はお前の事を――!」
 そこまで叫んで、上司は部屋の外へ、六弥さんの片腕によって、引きずられるようにして連れて行かれた。
 私は、しばらく一人で、静かな部屋の中に取り残された。
 少し経ってから、体が震える。
 ガクガクと、小さな揺れが止まらない。
 何分経っただろうか。
 部屋の重たいドアが開かれて、六弥さんが戻って来てくれるまでが、私にとっては長い時間に思えた。
「もう、心配いりませんよ」
 その優しい声に、私は涙を止める事ができなかった。
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