夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第3章 爪先ほどの想い(i7)完
質問を投げかけてきたのは、言葉がキツいあの上司で。
私も、正直に話す訳にもいかず、振り向かないまま俯いている。
このセットが使われるバラエティ番組には今の所、六弥さんが出演する予定は無い。
だから、六弥さんの事を考えて作ってました、と報告する訳にもいかなくて。
(それに考えてた事が私の、誰にも知られたくない妄想だから、絶対言いたくない! 特にこの人には!)
顔が赤くならないように、上司の顔を見ないまま別の考え事をする。
今日の上司は確か、いつもの作業着じゃなくて、スーツ姿をしていた。
挨拶回りにでも行っていたのかな。
いや、これから行くのかもしれない。
ディレクターさんと会議、というのも思いついたけれど。
この上司のかたは、テレビ局の人達にそこまで好かれていないはずだから。
だって、この人は物言いが、自覚があるのかどうか知らないけれどいつも、どこか上から目線で。
上の人が居る前ではやたらカタカナを使いたがるし。
何より、仕事以外の気遣いとか気配りとかが何も出来ない。
だからこの人の事は、私も名前で呼びたくない。
一応、厚崎さんという名前があるけれど。
他の厚崎さんに失礼になるくらい、人間性が薄いから。
「おい香住、何とか返事したらどうだ? どうせお前の事だ、女のくせに可愛げもない上に、声が出ないなんて嘘まで吐いて、羽田監督に取り入ろうとしやがって。ロクな教育も受けてねぇんだろ? まさか中卒だったりするのか? ははっ! お前らしいな!」
黙って聞いていれば、出てくる出てくる、私への不平不満。
この人は分かってない。
私を馬鹿にするという事は、私を採用した監督の事も、このテレビ局の事も馬鹿にしているという事になるのだ。
自ら墓穴を掘っているようなもの。
なのにペラペラとよくもまあ次から次へと出てくるなあ。
そもそも、何の話だったっけ?
ああ、このセットの事か。
なら、私もちょっとは悪いのかなぁ。
そんな事を考えていた時に、広い作業部屋に繋がる重たいドアが、バタンと閉まる音がした。
この部屋は、撮影にも使われる事がある部屋の為、扉が開く時は音が立たないよう設計されている。
入ってきたのは誰?
上司も同じ事を考えたようで、部屋の入り口に立っているであろう人物に、柔らかな、けれど意思の強さが伺える声をかけた。
