夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第3章 爪先ほどの想い(i7)完
今日は珍しく、美術スタッフとしての仕事が多い日だった。
セットの背景の一部、ほんの少しの場所だったけれど、そこを私一人に任せられて。
とても嬉しかった。
セットが使われる場面はバラエティ番組の、カメラに映るか映らないかという所で。
演者の椅子の後ろを私は任された。
美術監督は言った。
「物が言えないセットの代わりに、お前がセットの言葉を聞いて、表現してみてくれ。そしたら背景はただの道具じゃなく、演者を自ら受け入れる温かな場所になる」
監督は、いつも私をハッとさせる言葉を投げかけてくれるから。
私は監督が好きだ。尊敬している。
私の父よりずっと、大人に見える。
実際、監督は私の父の更に十歳上で、私とは四十近く離れているから。
余計に、どっしりと落ち着いて見えるのだろう。
監督は、その背中で、言葉で、態度で、私自身を認めてくれているような気がしていて。
ふらふらと足もとが、おぼつかなくなっても私が立っていられるのは、間違いなく監督のおかげだ。
そして――。
今の私には、お友達という関係ではあるけれど、六弥さんも着いていてくれている。
と、思う。
私の勘違いでなければ、六弥さんは私を応援してくれていて。
いつでもそっと手を差し伸べてくれる人。
勿論、六弥さんが全ての女性に優しい人である事は、承知の上だ。
私だけに優しくして下さっている訳ではない。
(勘違いでも良いから、この想いが六弥さんに届いてるって、思い込めたら良いのに)
でも、私は分かっている。
この恋は、報われない。
だから――。
夢を見る。
手を差し伸べて、私に甘い言葉を聞かせてくれる六弥さん。
私の顔を、好きだと言ってくれる六弥さん。
私の声を、気にしなくて良いと伝えてくれる六弥さん。
私に、子どもを望まないで居てくれる六弥さん。
私と、生涯を共にゆっくりと歩いてくれる六弥さん。
・・・・・・はぁ。
妄想だけなら、幸せになれるのに。
現実という物は、いつも私の思い通りにいかない。
だから、そんな夢を膨らませていたから、なのか。
出来上がったセットは、とても眩しく感じた。
これじゃあ作り直しかな、と思っていたら。
真後ろから不意に声をかけられた。
「ユニコーンに天使に妖精って、ここだけやたらファンタジーだな。なんでだ?」