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夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】

第3章 爪先ほどの想い(i7)完


 ワタシがテレビ局で仕事するのは、多くも無ければ少なくもない。
 アイドルの仕事は、基本的にはレッスンだからだ。
 まだデビューしてそれほど日が経っている訳でもない。
 季節を一つ跨いだ程度。
 それでも、デビュー前に比べれば格段に仕事は多く、幅広くなった。
 喜ばしい事だ。
 今日はテレビ局には行かない日なのに、気づけば彼女の事を考えている。
 香住カエデさん。
 手話でしか話さない彼女の名前を知ったのは、つい一週間ほど前の事。
 廊下に落ちた書類を拾うのを手伝ったのは、それより更に一週間前だ。
 カエデさん、と呼んでも良いだろうか。
 まだ早いだろうか。
 ワタシは、らしくもなくためらってしまう。
 一度、彼女をそう呼んだではないか。
 だがやはり、躊躇してしまうのだ。
 アイドルになったワタシの周りに、女性の知り合いが多くないからかもしれない。
 ファンの皆さんは、それはもちろん大切だが。
 知り合いとは違う。
 それに、カエデさんとは今は友人関係になれた。
 あの時オーケーしてくれて、どれほど嬉しく思ったか。
 きっと誰にも伝わらないだろう。
 そもそも、伝えられるほどの小ささじゃない。
 ワタシがカエデさんに抱える想いは、きっと誰にも理解されないと思う。
 マネージャーにも、メンバーにも、余すことなく全て伝える事はできないのだ。
 これは共感されない想いだろう。
 それで良い。
 この想いは、大切に、自分の胸の中の中心に仕舞っておくのだ。
 名前がつくほどチープな想いではないから。
 大事に、大事に、心の中に保管しておく。
 カエデさんとまた話せた時に、色鮮やかなまま再び想いを抱えていられるように。
 この世には、色々な形の愛がある。
 友愛、家族愛、恋愛、博愛・・・。
 そのどれにも当てはまるようで、どこにも当てはまらないのがこの想いだから。
 もしかしたら、いつかこの想いに蓋をしなければならなくなる日が来るのかもしれない。
 でもできれば、そんな時が訪れない事を、今はただ神に祈ろう。
 カエデさんと次に会えるのは、三日後になるだろうか。
 待ち遠しく思いながら、ワタシは次会った時に彼女とどんな話をしようかと、新しく楽しいプランを立てていた。
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