夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第3章 爪先ほどの想い(i7)完
両親が会いに来る日は決まって、私はそれを当日も翌日も仕事のある日に、と決めていた。
丸一日、下手すれば泊まってでも会おうとする両親に「会えない」口実が欲しくて。
私は、そうして両親の干渉から逃げるようにしている。
両親は、私と会うとまず何よりも先に私を強く抱きしめてきて、元気だったかと聞いてくるのだけれど。
私は笑顔を作りながら、首を縦に振る。
そうして、また私は嘘を重ねるのだ。
六弥さんがもし、私と同じ立場ならどうするだろうか。
ふと、六弥さんの事を考える。
きっと、私なんかよりももっと上手く立ち回るのだろう。
もしかしたら、私には思いもつかないような方法で、両親と接する事ができるのかもしれない。
いや、そうに違いないのだ。
私は自覚している。
自分が人よりもずっと、不器用な人間である事を。
どうしてもっと、上手に立ち振る舞えないのか、と。
自分で自分を責める事なんて、全然珍しい事なんかじゃなくって。
私はそれもあって、自分の事が好きじゃない。
声が無い、自信が無い、告白する勇気も無い。
無いものだらけで嫌になる事も多いけど。
仕方ないと諦めながら、私は今日も仕事に向かう準備を進める。
今日は、六弥さんはテレビ局に来ない日だ。
それを少し残念に思いながらも、私は鞄を肩にかけた。
私はテレビ局で働いているけれど、有名な役職についている訳じゃない。
裏方の、地味な、普通の、美術スタッフだ。
その中でも私は、声が絶対にマイクに乗らない事を理由に、舞台装置のセット替えの役割をもらう事が多い。
本来はアシスタントディレクターさんの仕事だけれど、そこに私も混じって仕事させてもらっている。
勿論、美術スタッフとしてセットを組み上げたり、テレビに映る背景のデザインの一部を手伝わせてもらったりもするけれど。
そんな仕事は、私の場合は稀だ。
美術スタッフとして、美術監督の下で働かせてもらっているのに、なぜだろうとは思う。
でも、そのおかげで六弥さんのそばに行ける事もたまにあるのだから。
文句を言っては罰が当たる。
誰に罰せられるのかは、いまいち分からないけど。
だって、私は神を信じてない。
神は、乗り越えられる試練しか与えない、という言葉があるけれど。
私の試練は一生、乗り越える事ができないのだ。