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私ただの執事でございます!

第4章 第四章音楽の申し子





一人置いていかれた気分になりながら俺は今日も爺ちゃんの店を手伝いに行った。


「楽、忙しいでしょう?無理をしなくていいのよ」

「別に平気だ。好きでやっているんだし」

お袋は俺に無理をしていないかと心配そうにする。
俺は店を手伝うのが好きだし、爺ちゃんはもう歳だし腰だって弱くなっている。

心配しないわけないだろ。

「でも、あの人は良く思ってないと思うわ」

「放っておけよ」

「けれどね楽…あの人は…いいわ。何でもない」

何か言いたそうにするお袋に俺は何も聞かなかった。
離婚してから親父とお袋は以前よりも疎遠になったし、親父はお袋をあれとかそれとかしか呼ばない。

しかも俺が店を手伝えば…

『みっともない真似をするな!』

なんて言いう始末だ。
離婚したと言えどあんまりだと思った。

愛情は無くとも情ぐらいないのか?
店を二人で回して人を雇う余裕もないのに、一時は不況のあおりを受けたのに、あの親父は!


なのに…


『お父さん、楽とあの人は大丈夫かしら』

『そうだな…親子関係が悪化している。このままではなぁ』

『私の所為だわ。私が…』


偶然聞いてしまったんだ。
お袋と爺ちゃんの会話を。

親父との関係が悪化しているの事をお袋を責めだした。

『私は、あの人と結婚したことを後悔していないわ。あの人が他にもう人がいたのも承知だったし』

『そうか…』

『私はあの人を愛した。でもこれ以上は一緒にいればお互いを傷つけるだけ…でも、幸せになって欲しかったのに』

『解っている。解っているさ』


何でだよ…

お袋は何であんな最低な男の幸せを願えるんだよ。

業界では愛人を持っているとか噂もある。
アイドルをする上で噂なんて普通にあるが、親父がお袋を大切にしないのは子供の頃から解っていた。

離婚した理由も親父には他に好きな人がいるからだ。

なのにお袋は今でも親父を思って…

あんまりだろう。


なのに…


「また店に行っていたのか」

「悪いかよ」

「もうあの店に行くなと言っただろう!あんな汚い価値のない店で無駄な時間を使うな」

「うるせぇ!」

価値がないのはどっちだ?
お袋を裏切り、今も傷つけている親父が許せない。

一人になった俺は胸が痛くて仕方なかった。

そんな時だった。

ピアノの旋律が聞こえたのは。

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