第4章 第四章音楽の申し子
【楽side】
佐伯の第一印象は最悪だった。
いや、最初は恩人でもあったが、プロデューサーとしての第一印象は最悪だった。
俺を痴漢と言った所為で龍と楽に誤解をされ、その後も天から嫌味を言われて散々だった。
それだけならまだいい。
経歴も不明で実績もないような男に俺達の音楽プロデュースを任せるなんてありえない。
日向が解雇になり後任が必要となったが、後釜になる人材が見つからずに難航していたのも解るが。
あの男のような真似をするような奴だったら?
そう思うと疑いを持ってしまうし、簡単に認める気はならなかった。
…が初日から俺はアイツを敵とみなした。
まずは俺達の実力を見るためだとか言いながら託児所に放り込み子供をあやせと言いやがった。
それまでは良い。
その後が問題だった、子供を泣き止ませることができなかった俺は不合格のペナルティーとしてオムツを手洗いさせられシーツまで処理させられた。
天下のTRIGGER、八乙女楽がだ!
あの屈辱は一生忘れることはないと思ったが、負けたままでいるなんて俺のプライドが許さなかった。
一か月託児所に通い詰めてなんとか子供を泣き止ませることに成功したが、なんとしてもひれ伏させてやろうと思った。
歌やダンスなら負けねぇ!と思いきや。
ダメ出しの日々に、顔色を変えることはなかった。
正直ムカついた。
「楽、子供みたいなことしないでくれる」
「ああ?」
「君はプロデューサーに振り向いてもらえないのが悔しいって顔をしている。パパに反抗しているか顔と同じだ」
「誰がだ!」
俺は態度を隠すことなく佐伯に敵意を向けるも奴は特に問題なさそうだった。
「楽、プロデューサーは悪い人じゃないよ。ちょっと厳しいけど」
「あれの何処がだ!」
「まぁ、龍は褒められているしね?」
「えっ…そんなつもりじゃ!」
イライラが収まらない最中、仕事を終えた後俺は何時ものように店の手伝いに向かった。
その数日後だった。
俺が奴を見たのは。