第4章 第四章音楽の申し子

「アンタ、本当になんなんだよ」

座り込み、眉を下げる八乙女さんに私は首をかしげる。

「あの親父にバンバン意見する癖に、親父もアンタを何処かで信用している」

「信用というべきなのか…」

私と社長の繋がり脆い糸で繋がっている。

「社長は私を利用している。ですから私もとことん利用してやろうと思っているだけです」

「は？」

「一応使えますのであの人は…一応契約では私は彼に雇われてますが、大人しく雇われる気はありません」


「お前、空気読めよ！」


私がシリアスな空気をぶち壊して来たので突っ込む八乙女さん。

「私、自分のプライドを踏みつけられるのが大嫌いなんです。ですから、大人しく使われる気はありません。むしろ私が社長を使いまわす気です」

「おまっ…どんだけ腹黒なんだよ！」

「まだまだ青いですね？相手と互角では勝てませんよ？相手を飲み込むぐらいにならないと」


私は太く強く生きて行かなくてはならない。

「賢く回り、強かに生きないとこの業界では凌駕されますよ」

華やかなようで残酷な世界。
弱肉強食の世界で生きて行くのはとても厳しいのだから。

「社長は昔の恋を拗らせすぎて捻くれてしまって、お可哀想に」

「お前幾つだよ！お前は親父の母親かよ」

「少なくとも貴方よりは世の中の酸っぱいさを知ってますけど」

「言い方が婆臭いな！」


失礼な人だ。


でも…

「貴方は随分とファザーコンプレックスだったのですね」

「はぁぁ！」

抱かれたい男と名を馳せる彼が実は可愛い人だと知ることができたので良しとしよう。

「なっ…誰が！」

「お父様を恋しがっていたんですね。可愛い人ですね」

「可愛くねぇ！」

「まだまだ子供ですね」

「ふざけんな！」


やっぱり彼は芸能界を渡るにはあまりにも優し過ぎた。

素直で真面目で優しい子だった。

でもその一方で痛みを理解できるからこそ、人の心を響かせる才を持っていると思った。