第3章 第3章希望の欠片
私はただのお客。
千早さんにとってはその他大勢のお客の一人でしかないのだから。
そう思うと切なくなる。
でも…。
もし恋人ができて、その人に執事を辞めてなんて言われたら?
そしたらもう会えなくなる。
そんなの耐えられない!
「お嬢様、何処でそんなおかしな噂を?」
「だって、最近…お店にいる時間が少ないし…他のお客さんも噂をしてました」
「困りましたね」
やっぱり恋人ができたの?
だから仕事も軽減していたの!
「店にいる時間が減ったのは事実ですが、仕事の一環でしてね」
「へ?」
「恋人を作った事も作ろうと思った事もないのですがね」
「えっ…じゃあ」
私の早とちり!
「すすっ…すいません!私ったら…#NAME7#さんが恋人ができたら、お店を辞めてしまうのかと思って」
「いいえ、お気遣いありがとうございます。紡お嬢様」
(私の名前!)
今まではお嬢様としか呼ばれなかったのに私の名前を…
ちゃんと覚えてくれていたんだ。
「我ら執事とは哀れな存在です。お仕えするお嬢様無くして存在しないのです。故に…私が執事で無くなる日は、お嬢様方に必要とされなくなる日ですね」
「そんな日来ません!」
「ははっ…ありがとうございます」
絶対ありえない!
だって、このお店に来る人達は執事さんに合うのが何よりも楽しみだった。
まるで大好きなアイドルに会いに行くような気持だったり、好きな人に会いに行くような気持だったりする。
けれど、夢の時間でしかない。
現実ではないのが時折寂しさを抱く事がある。
それでも…
「一時の夢の時間が心の癒しになり、また明日頑張ろうって思えるんです」
「ありがとうございます。何よりのお言葉です」
敵わない恋だと解っていながらも私は貴方への思いが捨てきれなかった。