第3章 第3章希望の欠片
【万理side】
最近紡さんの雰囲気が変わった。
なんというか前よりも綺麗になったというか。
「悪夢だ」
「社長…」
「僕の大事な娘に悪い虫が…最悪だ!」
事務所で社長が頭を抱えながら泣いているのを見て俺は困り果てた。
「まだ決まったわけじゃ…」
「いや、あれは完全に恋の病だ…しかもかなり重症だ。しかも最近はダイエットを始めて、外食も断られたんだよ!」
娘命の社長は紡さんの事になると普段の冷静さは皆無だったが、そんな所も尊敬するけど。
「ダイエットなんてしなくていいのに…最近はスイーツの雑誌じゃなくてファッション雑誌ばかり読んで研究しているし!あれは年上の男に誘惑されたんだ!」
「何故そう思うんですか」
「前に男物のハンカチが部屋に置いてあったんだ」
社長、年頃の娘さんの部屋には入ったんですか!
しかも、本人が知らないとなると色々まずいですよ!
「万理君!お願いだよ!紡の相手がだれか突き止めてそれとなく諦めるように誘導してくれないかい?」
「はい?」
「頼むよ!」
さりげなく高度な事を頼まれた。
相手を見つけ出すのはまだ良いとしてさろげなく諦めさせるなんて難しい気が。
「ですが、紡さんはしっかりしてますし。その…なんというか」
本人の前で言いにくいが、思い込みが少し強い部分もある。
しかも一途だ。
もし、好きな人ができたのならば。
周りがなんて言っても無理な気がするだけど。
「じゃあ、せめて相手だけでも!」
「やってみます」
「本当!ありがとう万理君」
尊敬する社長の頼むを無下に断れなかった俺は安請け合いをしたことを後に後悔することになる。
紡さんがその人にどれだけ本気であるのか。
後で思い知る事になるのだから。