第3章 第3章希望の欠片
より品質改善に拘った彼女自身もアレルギーに苦しんだからこそオーガニックを重視したのに、イメージモデルに選ばれたアイドルは、彼女の自尊心も踏みにじった。
それでも最後まであきらめずに会社を守り続け今は大手企業となった。
「人間嫌いの人は誰かに傷つけられたことがあるから…特に女性が男嫌いになるには理由があります」
「うん…」
「だけど、Oceanの製品はどれも優しく包み込み羽のようにです。それは製造者の心が純粋だからです。貴方のように」
「え!」
私はあの時。
託児所で子供達に優しく接する十さんを見て、彼に似ているとさえ思った。
優し過ぎて傷つく人だと。
「十さんは海のように包容力がある。だからその包容力で、優しさで包んであげてください…傷ついた女の子を、ファンを…あの二人では役不足です。貴方にしかできない」
十さんでいいんじゃない。
十さんじゃないとできないのだから。
「でも、俺のイメージは…」
「セクシーとは性的なモノだけをいうんじゃありませんよ。時には寛大で大胆で、そして広い包容力で女性を安心させるのもセクシーな男性の魅力です」
「セクシーさか…」
体格がいいだけのアイドルは星の数ほどいるけど、十さんの最大の魅力は包容力だ。
「貴方が女性に対して初心なのは存じております。ギャップに苦しむのも…けれど、貴方だけではありませんよ」
「え?」
「役者や女優だって仕事とプライベートが一緒ではないでしょう?」
「それは…そうだね」
「だから役を演じるという事で気持ちを切り替えて見てもいい…セクシーな一面を出しながらも貴方の内面を出しても良いと思います」
内面の十龍之介を出してもイメージが壊れることはない。
だから自分を偽るなんて思う必要はない。
「でも社長が…」
「あんなオッサンの事など気にする必要はありません。プロデューサーは私です」
「へ?」
「口出しはさせませんので」
彼は私を使えるから音楽プロデューサーに選んだのだろうけど。
甘いわね。
大人しく言う事を聞くわけがない。
「こうなったらふんぞり返っている鬼畜野郎をぶっ飛ばしてやりましょう」
「えええ!」
自分が世界一偉いと思っている彼に一泡吹かせてやりたい。