第3章 第3章希望の欠片
TRIGGERのプロデューサーに就任して三週間。
彼等との関係はつかず離れずを貫きながらも、八乙女社長は特に何も言わなかった。
彼曰く、結果がすべてだとの事だ。
結果さえだせば、わりと寛大であることが解った。
口が悪く、態度も悪く、俺様であるけど。
けれど、根っからの極悪人ではない。
見ていれば解る。
TRIGGERに対する愛情は本物だと思う。
でもやり方が余りにも…
「姉鷺さん、姉鷺さん」
「何よ?どうしたの?」
曲のアレンジをしながら隣で仕事をする姉鷺さんを呼ぶ。
「八乙女社長は、初恋をこじらせたのでしょうか」
「ブッ!」
「アンタ!何言ってんの!」
何時の間にか事務所の扉でコーヒーを飲んでいた八乙女社長は噴出した。
「なんていうか、TRIGGERに接するのが巷で有名なツンデレ的なんですよね?そういう人ってたいがい青春時代に初恋を拗らせた人が多いんですよ」
「いや、意味わからないわよ!」
「ああ、初恋ではなく、大人になってからですか?本命に言い寄るも…相手にされなかった的な」
バキッ!
「その減らず口をすぐに閉じろ!」
「社長…まさか図星ですか」
「姉鷺もそんな戯言に耳を貸すな!」
うんうん、この解りやすさは同じだ。
「社長、私は貴方に対する印象が変わりました」
「何だ?」
「社長は可愛い人だったんですね」
きっと、若かりし頃は苦い恋をしたのね?
実の息子ともちゃんとコミュニケーションも取れない不器用さ。
「社長、お任せください。貴方の悩みを解消し徹し上げましょう。その陰湿かつ陰険な表情は貴方の心の歪みからくるもの…それさえ解消できればいいのです」
「要らんわ!余計なお世話だ」
「大丈夫です。私に万事お任せください。貴方は大事な踏み台…じゃなくてスポンサーですから」
「アンタ、普通に言ったわね?」
最初こそは渋々、プロデューサーを引き受けたけど。
私との契約違反はしなかった。
だから私なりに歩み寄る事を決めた。
「まぁまぁ…そんな眉間に皺を寄せているから枯れているんですよ?昔は男前だったんでしょう…なのに」
「ええい!憐れみの視線を送るな!貴様は私を馬鹿にしているのか」
「真面目です」
「余計悪いわ!」
うん、ちょろいな。