第2章 新プロデューサーはイケメン
ある程度レッスンが終わった頃。
「アンタ、大丈夫なの?」
「はい、曲ならできています」
「そうじゃないわよ!あの子達にわざと嫌われるような真似して」
ああ、最初から喧嘩売った事か。
まぁ、結構やり過ぎたと自覚はあるけど。
「嫌われるぐらいにした方がやりやすいです。特にあの二人は私を認めていない…ならこちらそのつもりで行きます」
「だからって…」
「問題ありません。彼等は仕事に関しては誠実です。嫌いな相手だろうが不愉快な人間でもボイコットはしませんよ。自分の技術の向上の為なら泥水も飲む人ですから」
「他の言い方はあるでしょ!」
九条さんと八乙女さんはある意味自尊心の塊だから、刺激すればするほど食らいついてくる。
その一方で十さんは逆かもしれない。
「ただ問題点が」
「何?」
「十さんです」
「あー…龍ね」
彼はエロ担当で売っているけど中身と伴っていない。
別にそれはいいのだけど、彼の精神が追い付いていないような気がする。
「彼はギャップに戸惑っています。ですがこのままだと危険です」
「え?」
「今の状況が裏目に出なければいいのですが」
私の考えすぎだったらいい。
優し過ぎる彼はこの業界には一番の餌食になる可能性が高い。
野心家の恰好の的にならなければいいが。
もしくはストーカーとか。
気にし過ぎだといいけど。
「では、今日のお勤めは終わりましたので」
「あ?もうそんな時間?」
「はい、お疲れ様です」
事務所を出てそ行こうとすると何故か外が騒がしかった。
「…ねぇ、外にポルシェが止まっているわよ」
「そうですね」
「しかもやたらとイケメン」
「そーですね」
「アンタの店の従業員じゃない!出待ちできてるわよ!何とかしなさい!」
ですよねー。
全く何で迎えに来ているのか。
「「「お勤めご苦労様です!」」」
しかもグラサンにスーツと来た。
これじゃやのつく自由業じゃないか!