第2章 新プロデューサーはイケメン
本格的にプロデューサーとしての仕事が始まった。
私の主な仕事は音楽プロデューサーとしてなので、レッスンから始めるのだった。
ピアノの前で声を出してもらうも。
「止めてください」
「はい」
ボイストレーニングの講師にピアノを止めるように告げる。
「さっきから何を怒って叫んでるんですか」
「は?」
「怖い顔をして、あー、あー叫んで」
「はぁ?正確に音程を取っているだけだよ」
「既にこれは発生練習じゃなく歌は始まっている…音を出してください」
私が前に立ち、代わりに同じように発生をする。
「えっ…」
「嘘…」
「マイク無しでここまで届くのかよ!」
やって見せると九条さんは眉を顰めた。
「君は高音部になると、喉の開きが閉じている。だから歌う時に変な癖が出ている」
「僕は…別に」
「唇が固いから、大事なフレーズが聞こえにくい。もっと柔らかくフレーズを大事にして…詩は作詞の命。雑に歌わないでください」
「…雑」
顔にこそ出さないけど少し傷ついているようだけど、まか彼はハングリー精神が強いから大丈夫だろう。
次は正反対の彼だ。
「逆に十さんは丁寧だけど勢いが足りない。だから弱弱しく感じる。まるで初デートの中学生並み」
「はっ…初デートの中学生」
「もっと自信をもって強引に歌ってください」
「…はい」
九条さんとは反対に十さんは少し時間がかかるかもしれない。
それで最後は――。
「八乙女さん」
「受けた立つ!かかって来やがれ!」
何で戦闘態勢になっているのか。
まぁいいけど。
「言葉が安ぽい」
「は?」
「切ない心情を歌う大事な部分が、まるでナンパ男の口説き文句に聞こえます」
「ナンパだあ!ふざけんな!もっと解りやすく言え!」
中傷的でわかりにくいと文句を言うも、後は自分で見つけないといけない。
「ではこのまま個人練習に入ります」
背後で騒いでいる八乙女さんを無視して個々のレッスンに入る事にした。