第2章 新プロデューサーはイケメン
リラックスできるピアノ演奏を流し、お茶のお代わりを注ぎながら、改めて名を名乗る。
「申し遅れました。私は佐伯千早と申します」
「小鳥遊紡です。危ない所助けていただき、本当にありがとうございます。あの…お会計を」
「本日はお嬢様の笑顔が一番のお代ですよ。またのお越しをお待ちしています」
「はっ…はい!」
元より無理に連れて来たのでお金を貰うつもりはないのだけど。
「マスター、本当に罪な方ですね」
「ん?」
「あれは完全にアウトです」
普通にサービスをしただけだ。
執事としてお嬢様に笑顔にプレゼントするのは当然だ。
「マスターはそうでも、相手はどうでしょうね?」
「何が?」
有利は深いため息を付きながらティーセットを片付け、掃除を始めるのだった。
その出会いから三日後。
「お帰りなさいませお嬢様」
「あっ…あの!先日はありがとうございました」
「いいえ」
本当にお礼に来てくれたようだ。
「どうぞ」
「はっ…はい。ここ、執事カフェだったんですね?知りませんでした」
「初めてのお客様はたいがい間違わられますし、普通の喫茶店として利用される方もいらっしゃいますよ」
「そうなんですね。お値段もリーズナブルで…びっくりしました」
このご時世、価格は戦いだった。
ディナーやワイン等は安くないけどティーセットはカフェとあまり変わらない値段にしている。
そうでなくては若いお客様には来ていただけないから。
「お待たせしました。本日の日替わりケーキセットでございます」
「わぁー綺麗」
「御用が御座いましたらそちらの鈴でお呼びくださいませ」
「はい!」
私はそのまま他のテーブルにて挨拶に向かった。