第57章 バタービール
ドラコが去ってから一時間ほどで、ハーマイオニーがミラの座っている噴水のある広場に戻ってきた。
「----、----ミラ!」
ミラは自分の名前が呼ばれていると気が付いて振り返ると、ハーマイオニーが心配そうにミラを見つめていた。
「待たせてごめんなさい…大丈夫? 何かあった?」
「ううん、ちょっとボーッとしてただけ」
ミラは取り繕うようにハーマイオニーに笑顔を向けた。
『グレンジャーやウィーズリーたちが知ったらどう思う? お前が、心の底ではマグルを嫌ってるってことをさ』
ドラコに言われた言葉を嫌でも思い出してしまう。どう思われてもいいと言ったけれど、本当は強がっていたのかもしれない。どうしてこうもドラコの言葉が突き刺さるのか----この間は闇の魔法使いにはならないと言ってくれたのに、今日は嫌に意地悪だった。
『失望するかな。それとも、怖がるかな。----ポッターはどうだろうな?』
どうして、こう人を揺らすのが上手なんだろう。見えないけれど、ゆっくり、ゆっくりと蛇に喉を締められているような感じだ。
ハーマイオニーは静かにミラの様子を見ていた。
「何か悩み事があるなら、私、聞くわ」
「ハーマイオニー、私は大丈夫だよ」
「…でも、あなた…」
「おーい!お待たせ!」
と、ロンが走ってやって来た。
「ごめん!どれもこれも気になっちゃって…どうかした、二人とも?」
「ううん、ちょっと体が冷えただけ。三本の箒にある、バタービールとやらを飲みに行こうよ」
「そりゃいい。それも楽しみにしてたんだ」
ロンはミラから自分のお菓子の入った袋を受け取ると、二人を急かすように三本の箒に向かった。
「ああもう、ロンったら」
「ハーマイオニーもほら、行こう」
ミラはハーマイオニーの手を取ると、ロンに追いつくように引っ張った。ハーマイオニーはいくつも言いたい事をなんとか飲み込み、自分の手を引いてくれているミラの後ろ姿を見ていた。