第1章 ぽっちゃり彼女
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美穂子を迎えに来てみれば、一護がいやがった。
美穂子と一護は学部が違うつーのに、何気に仲がいい。
俺の勘が正しければ、一護は美穂子にぜってー気がある。
だから、久しぶりのデートで迎えに来た俺が見た二人のツーショットは、正直気分のいいものじゃなかった。
けど、まぁ…美穂子は一護の様子に気づいていないようだし。
今は俺が彼氏だし。手放す気なんてねーから、大人の態度で、文句を言いたい気持ちをぐぐっと押さえた。
せっかくのデートなのに、喧嘩したらもったいねーしな。
「ねぇ、どこに行くの?」
「天気いいし、最近出来た、ららぽーととかどう?」
「いいね!春もののワンピとか、あるかな?」
「あんまりセクシーなのはダメだぞ」
それじゃなくても、美穂子は比較的胸が開放的な…タイプを好む。
本人曰く、胸を隠すような服は太って見えるのだそうだ。
まぁ、確かに胸のトップが高さあるからな。
「私、セクシーなやつなんて持ってないよ?」
「-…無自覚か。恐ろしい」
「?」
美穂子が首を傾げてる。
そのときにふるりと揺れる胸が大好物だったりするが。
まぁ、今は運転に集中。
「そういえば、一護と何話してたんだ?」
「…………」
「美穂子?」
おいおい、なんで黙るんだよ。
ちょーっと不安になるだろ!
ちらりと美穂子のほうを見れば、少し眉を潜めてる。
なんだ?
言いたくないのかよ。
「美穂子、一護と内緒の話でもしてたわけ?」
「…内緒ってわけじゃない…けど」
もごもごと言いにくそうな美穂子にちょっとジェラシー。
一護に話せて俺に話せないなんて、俺。
許したりしねーよ?
信号が赤になって。
俺は静かに車を停車させると、左手を美穂子の頭に乗せる。
すると、美穂子の視線が俺のほうに向いた。
「話せない?どうしても?」
「-………。もう、ずるい」
ぷーっと頬を膨らませる美穂子に、俺は内心でにやりと笑みを浮かべる。
美穂子ってこういうの、可愛いよな。
頭撫でられると、ちょっと弱いつーか。