第3章 ■夏祭り
各々がたこ焼きや焼きそばを食べ終わり、さあ遊ぶかという話になったとき、近衛が『ゴメン、私トイレいってくる』と言った。
『すぐ戻るからこの辺で待ってて~』
「待て待て、俺も着いてく。オマエナンパされんだろ」
『ナンパに引っ掛かるようなバカじゃねぇよ』
結局、近衛は一人で行ってしまった。このあと、無理にでも止めなかったことを後悔するようなことが起きるとは、まだ知るよしもなかった。
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近衛side
『…ったく、一人でトイレくらいの行けるっつーの』
何がナンパされんだろ、だ。
まあそれが悟なりの優しさだとわかってる。なんなんだろうね。ホントに好きな人には素直になれないって。惚れた弱味ってやつか?いや既に恋人同士だから別にいっか。
そんな生産性のないことを考えながら、巾着からハンカチを取り出して手を拭こうとした時だった。
「あれっ?近衛じゃん~」
『…っ、岩佐先輩…』
そこには、中学の時一つ上だった、岩佐先輩が薄っぺらい笑顔を浮かべて立っていた。