第9章 【第六講】留年するなら三年生で生徒会長になるのもアリかもね
「お疲れ様でした、礼!」
「お疲れ様でした!」
○○の声で部員達は頭を下げる。
とある日の放課後。部員達は汗だくの体で武道場を後にする。
○○は一呼吸を入れて伸びをする。
もうすぐ大会がある。あと少し個人練習をしてから帰ろうと思った所で、入り口から声をかけられた。
「○○殿」
「桂くん?」
顔を覗かせたのは桂。
ちょいちょいと手招きをしている。
○○は顔をしかめる。下校時刻はとっくに過ぎている。
桂は部活動など行っていないはずだが、どうしてこんな時間まで学校に残っているのだろう。
周りにいた後輩達は色めき立っていた。
「部長、告白されるんじゃないですかァ?」
「あの人、先輩と同じクラスの人ですよね?」
夕暮れの放課後というシチュエーション。
わざわざ呼び出すというシチュエーション。
恋愛漫画大好き女子達はキャイキャイと肩を寄せて盛り上がる。
「私としては、呼び出しは決闘の方が盛り上がるんだけど」
「またまたァ、部長ってば、照れちゃって!!」
ツンッと○○は二の腕を突かれる。
こういう女子高生のノリは、部活に入って初めて知ったものである。
桂が○○にちょっかいを出そうとも、こんな風に乙女的反応をする女子は3Zには皆無。
色恋沙汰はあるが、キャイキャイという雰囲気は○○の周りには存在していなかった。
3Zにあるのは男達がストーカーで、一方的に○○や妙達、女子に殴られるという一幕のみ。
「あれ、桂先輩ですよね。私の友達で、桂先輩が気になるって子がいるんです」
後輩の言葉に○○は目を剝く。
「なんですと?」
「凛とした美貌がたまらないって言ってました」
○○は震える。
内面を知らないということは、実に恐ろしい。