第8章 【第五講 後半】文化祭といえばライブがつきもの●け姫
風紀委員のメンバーは3Zの教室に集結していた。
○○は腕をこまねきながら教卓の上に目を遣る。
そこには「丸ビル」と書かれたプレートが置かれているのみ。
銀八先生が用意したはずの空き缶はどこへ行ったのだろうと○○は思う。
「それにしても、ひどすぎるんじゃねーか、この被害件数は」
何者かによる被害はさらに拡大していた。
○○が長谷川の屋台で出会った女子生徒以外にも、三名の生徒が制服を刃物で切られていた。
インクの被害は計七件、所持品を盗まれるという被害も八件に上っていた。
「大丈夫。近藤さんは被害じゃないから。アートだから。マイナス二件」
背中のインクに加え、近藤は見廻りの最中に制服を切り刻まれる被害にも遭っていた。
赤インクに切り込みファッションはセンス抜群だと、○○は思ってもいない世辞を述べる。
「そうかァ? ファッションはよくわからんが、さすがに前衛的過ぎるんじゃないか?」
今度は簡単には騙されず、近藤は眉間に皺を寄せる。
「とにかく委員長、ここは人員を増強した方がいいぜ」
副委員長の土方が提案するが、既に風紀委員総出で対処にあたっている。
人手を増やす当てがない。
「ここはもう警察に連絡した方がいいんじゃない。イタズラのレベルじゃない」
○○は嘆息する。
銀魂高校で行われている不埒な行いは刑罰を伴う犯罪行為だ。
「しかし、犯人が生徒だった場合、事は厄介だな」
近藤は顎をさする。
「まずは先生に相談した方がいいね。ここは理事長かなァ……」
学校ぐるみの問題となると、理事長や校長に先に伺いを立てる必要がある。
校長ハタは当てにならないため、必然的に理事長お登勢となる。
「警察に通報しないとなっても、生徒だけだと限界だよね」
学校内で犯人確保に動くなら、頼りになるのはコワモテの体育教師松平だろうか。
○○が思案する横で、沖田が口を開いた。
「こうなったら、あの人に頼みますか」
沖田が挙げたのは意外な人物の名前だった。