第17章 【第一三講】辻褄を合わせるのも楽じゃない
全ての出場者のパフォーマンスが終わり、○○ら出演者はステージ上へと集められた。
「それでは発表いたします!」
どぅるるるるるるるるるるるる……
と、万斉は口でドラムロールの音を奏でたのち、
「吉原商業文化祭音楽コンテストへの出場権利獲得は、村田兄妹です!」
じゃん! と発表した。
なぜだー!
バカな!
と肩を落としながら、参加者は散り散りに帰って行く。
○○も他の参加者同様、帰路につこうとステージを降りた所で、サングラスの長身に呼び止められた。
「待つでござる」
「何?」
○○は警戒する。
今の所、○○は風紀委員として彼等と相対したことはない。
彼等が風紀委員と認識しているのは、近藤、土方、沖田だけのはずだ。
だが、バレたのかもしれない。
○○が風紀委員とわかり、何かを仕掛けてくるつもりかもしれない。
「おぬしには敢闘賞として、渡したいものがある」
万斉は後ろのポケットに手を入れた。
いよいよ、物騒な流れになった。
油断をさせておいて、得物を取り出す算段だろうか。
万斉の手に注目する○○だったが、万斉が取り出したものは、ナイフでもナックルでもなかった。
「CD?」
万斉は銀色の円盤を手にしている。
「拙者が歌う銀魂高校の校歌でござる。一番から十五番まで収録されている。同好の士として、おぬしに特別に進呈するでござる」
この世に一枚しかないレアものだと、万斉は得意げに手渡してくる。
「いらんわ!」
「遠慮しなくていい。また歌えば何枚でも作れるでござる」
「じゃあレアものじゃないじゃん!」
○○は思わずビシッと突っ込む。
天敵である不良と漫才のようなことを繰り広げる。
「同志、どうしたでござる?」
ツッコミの恰好のまま、○○は動きを止めている。
万斉の後ろを通り過ぎた高杉は、あの時のように微かに笑っていた。
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