第16章 【第十二講】いつかまたこの場所で君とめぐり会いたいはチェリー
水曜日の四限目。そろそろお腹が空いてきた。
窓から差し込む太陽の光が○○の顔を照らしている。
穏やかな陽気とは裏腹に、教壇に立つ教師の顔は真っ青だ。
「ででででであるからして、ここここの問題は」
恐怖のあまり、呂律が回らなくなっている。
こうなってしまうと、授業にならない。
○○は真剣な表情でペンを握り、ノートに落書きをこさえる。
ただでさえ、問題児ばかりの3Zを教えに来る教師は気が重くなっている。
担任の銀八はじめ、坂本や服部など、3Zに対しても他クラスと変わらず接する教師も少なからずはいる。
だが、多くの教師にとって3Zは受け持ちたくないクラスだ。
嫌だな~と思う教師は、たくさんいた。
だが、今は嫌だな~どころではない。3Zの扉は地獄への入り口だ。
座席の中央後列に、魔王が鎮座している。
必要以上に力が入っているため、教師の持つチョークがバチンッと折れた。
「ごごごごめんなさい!」
自分が立てた音に驚き、教師は怯えながら振り返る。
振り返った教師は、見てはいけない方向に目を向け、見てはいけないものを見てしまった。
高杉と、目が合ってしまった。
見てはいけないと分かっていても、意識しているから無意識に視線が向いてしまう。
蛇に睨まれた蛙の如く、教師は固まり、一層青ざめる。
高杉はただ、座っているだけだ。危害を加えるつもりはない。
暴力を振るわれると思い込み、教師が勝手に恐れている。