第14章 【第十講】間近な動物のにおいはかなり強烈
「大丈夫ですか、近藤さん」
まだ足元で座り込む近藤に○○は声をかけた。
顔色は戻っているが、キョロキョロと周囲を見回していた。
警戒しているのだろうと、○○は近藤の心中を察する。
何せ、食われる寸前だったのだ。
九死に一生を得たとはいえ、またいつ襲いかかられるかと恐怖を感じているに違いない。
「トラは? 団子で眠らせた方の」
「安心して下さい。皆が檻まで運んで行きましたよ」
風紀委員数人の手によって、トラは檻へと運ばれた。
「そうか。惜しいことをしたな」
「惜しい?」
○○は怪訝な顔をする。
「記念撮影し損ねただろ? トラを退治した俺の勇姿を見れば、お妙さんに俺の勇ましさをアピール出来たかもしれんというのに……!」
近藤は心底悔しがる。
「近藤さん……能天気で何よりです」
トラに食われかけたトラウマで後生苦しむ。
なんてことには、ならなさそうだ。
【第十一講】へ続く→