第14章 【第十講】間近な動物のにおいはかなり強烈
扉を閉め、二人は立てこもる。
○○は窓から外の様子を見ていた。
先程姿を見せたトラは行方をくらませている。
幸い、武道場の窓には鉄格子が嵌められている。
トラが戻って窓に体当たりをしたとしても、ちょっとやそっとでは割れはしまい。
「なんなんですか、トラ……ゴリラ……」
男子生徒はブルブルと震えている。
トラやゴリラが闊歩する場所に迂闊に出るわけにはいかず、わけがわからぬまま、時間だけが経過していた。
「ウサギもね」
愛らしいフワモコの生物は○○の肩に乗っていた。
人差し指で眉間を撫でると、プゥプゥと甲高く鼻を鳴らす。
「可愛いよ。撫でてみる?」
「こんな非常時にそんな呑気なこと……」
「非常時でも、可愛いものは可愛いよ」
ホラ、と○○はウサギの小さな体を抱え、男子生徒に手渡した。
「……かわいい」
「でしょ」
いつでもどんな時でも、小動物は心を慰めてくれる。
その時、頭上からガタゴト、キーン、ピーという音が響いた。
――ったく、余の可愛いペット達が傷ついたらどーしてくれんの?
――一匹でも何かあったら、3Z全員退学にさせても余の怒りは収まらんぞ!