第1章 before
「ねぇリヴァイ。
覚えてる?」
紅茶を飲みながら窓の外の景色を見ているリヴァイに問う。
「覚えてない。」
リヴァイは窓の外の景色を見たままだ。
「まだ何も言ってないんだけど。」
「どうせソフィアのことだ。下らないことだろ?」
「………………うーん。」
リヴァイが紅茶をすする。紅茶の甘い香りが私の方まで漂ってくる。
「で、なんだ。」
「下らない、ことかな。」
「いいから言え。」
「明後日…さ」
ぜんぶ言い切る前にリヴァイがこちらを見る。
その視線につい言葉が出なくなる。
「…………………。」
「…………………。」
訪れる沈黙。
やっぱり言わない方がよかったのだろうか。
ギュッとジャケットの胸元を握る。
それと同時にチクリと胸が痛んだ。
「………忘れちゃいねぇよ。」
リヴァイの顔が逆光で見えなくなった。
でも、どんな思いでこっちを見ているのかはだいたい想像がついた。