第3章 encounter
「よかった。頼んだよ。
では、行っていい。」
「………はい。」
言われた通りに部屋を後にしようとした時、先ほどの冷たい声が私を呼び止めた。
「おい。」
見ると、リヴァイ兵長が私を見つめている。
「お前、そのクソ長ぇ髪、どうにか出来ねえのか。」
「………………。」
私の髪はゆうに胸元よりも長い。
確かに戦闘には不向きなのかもしれない。
でも。
「申し訳ございませんが、これだけは切りたくありません。」
きっぱりと言う。
ウォール・マリアが陥落した時、私は訓練兵だった。
女手一つで私を育ててくれた母は、その時死んだ。
母譲りの黒の長髪は、私にとっては形見みたいなものだ。
まさか言い返されるとは思っていなかったのか、リヴァイ兵長は何も言わない。
「壁外調査の時は結いますし、この髪と心中することになっても構いません。」
もう一度きっぱりと言うと、私は部屋を後にした。