第5章 河上万斉《聖夜の謀》※高杉の恋人/裏切り
「晋助には晋助の考えがあるでござる」
「万斉さんには晋助の考えがわかるんだ?」
「長い付き合いでござるからな」
「それ、私に対する嫌味?」
○○は眉間に皺を寄せる。
出会って半年になるが、○○には高杉の考えなどわからない。
言葉を交わすことすらほとんどない。
ふらりと戻って来たかと思えば、○○を抱いてまたしばらく帰って来ない。
ただ、それだけの関係。
○○の憎らしげな視線を真っ直ぐに受け、万斉は目を逸らす。
サングラスに隠され、○○は万斉が目を逸らしたことに気づかない。
○○は再びボトルからアルコールをグラスに注いだ。
「それくらいにするでござる」
万斉は○○の手を掴んだ。
○○は表情を緩ませる。
「サングラス取ってくれたら、もう飲まない」
「またその話でござるか」
万斉はうんざりして吐息を漏らす。
「なんで部屋の中でサングラスが必要なのよ。外だって、いつも真っ暗だよ」
窓の外に目を向ける。見えるのは宇宙の闇だけ。
もう半年、○○はこの景色以外を見ていない。
「拙者は人前ではサングラスを取らないようにしているでござる」
「だから、何で?」
「目を見られると気持ちを悟られやすいでござろう。心を読まれることは負けに等しいでござるからな」
「少しでも有利に運ぶために隠してるってこと?」
「そんな所でござるな」
○○は眉間に皺を寄せた。
「それ、卑怯じゃない? ていうか、弱虫?」
「戦術でござる」
何でもないように万斉は口に出したが、心の内を読まれたような気がした。
卑怯で、弱虫。そうかもしれない。今の関係を壊すことを万斉は恐れていた。
○○とも、高杉とも。