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~あさきみじかしゆめ~ 銀魂短篇集

第5章 河上万斉《聖夜の謀》※高杉の恋人/裏切り


《聖夜の謀》

「ねえ、サングラス外してよ」

 ○○は正面から万斉を見つめる。
 アルコールの影響で頬は赤らみ、目は虚ろ。

「誰も万斉さんの素顔を見たことないって言うんだよ。また子ちゃんも、変態も」

 変態とは、もちろん武市のことを指す。
 ○○は武市を変態というあだ名で呼んでいる。
 たまに武市変態と呼ぶまた子よりも酷い。

「晋助も、でござろう」

 万斉の言葉に、○○はムッとした表情を浮かべた。

「誰それ。そんな人、知ーらなーい」

 ○○はグラスを傾け、一気に呷る。

「何度言えばわかるでござるか。遊びに行っているわけじゃないでござる」

 高杉は今、地球に行っている。
 クリスマスで浮かれ騒ぐ江戸の街を破壊するため。
 ついて行くと言った○○を、高杉は邪魔だと一蹴した。それを○○はネチネチと怒っている。
 艦船に残っている幹部隊士は万斉だけ。

「わかってるよ、そんなこと。そりゃあ、本当は買い物とかしたいけど」

 室内を見回す。
 クリスマスらしい飾りどころか、目につくものは黒と灰色ばかり。
 機械ばかりの無機質な空間。

「浮かれて買い物なんてしてたら、私もテロに巻き込まれちゃう」
「わかっているなら、拗ねる必要はないでござろう」
「だから、何でついて行くだけなのもいけないの?」

 高杉に半ば拐かされる形で地球を去ってから、○○は艦船の中に押し込められている。
 出歩くことは出来なくても、地球の空気を、外の空気を吸うくらいは許してもらいたい。

「ずっと船の中に一人でいる気持ち、わかる? 今日は万斉さんが付き合ってくれてるからいいけどさ」

 普段、○○の周囲には誰もいない。
 また子や武市は、万斉のように延々と話に付き合ってくれることはないし、幹部隊士以外が○○に声をかけて来ることはない。
 相手は高杉の女。迂闊に近づけば何をされるかわからない。
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