第4章 第三章雨の日の秘め事
万理さんに長いお説教をされる頃には日が暮れていた。
「万理さん、もういいですか」
「反省しているの?」
「私だって好きで触らせたわけじゃないんです」
「触らせたの!」
あ、まずい。
「いや、少し」
「ダメ!二度と一人で営業も行かせないからね!」
そうは言うけど、どうしても大事な営業の時は一人で行かざるを得ない。
「俺、君を一人にするのが心配になって来た。事務所辞めてもちゃんと連絡してね…というか仕事場にも様子を見に行こうかな。律さんと響也さんにもお願いして…」
「いや、いいです。万理さんが過労死します」
ただでさえ忙しいのに。
事務所にいる間も私の世話を焼いているのに、止めた後まで面倒を見る気なのか。
「別にそれぐらいどうってことないよ。俺が知らない所で君に何かある方が心配だよ」
「万理さん…」
私が事務所を辞めると言ってしばらくの間は、ぎこちなかったのに。
ここ一週間万理さんは何時もの万理さんに戻った。
うん、前よりも過保護さは酷くなったけど。
「最近万理さんが響になってきている」
「俺は響也さんを尊敬するよ。きっと彼は今まで大変だっただろうね」
「ディスってますか?」
「事実だよ」
頭を撫でながら困った表情で言う万理さんは私を小さな子供と勘違いしていないだろうか。
「万理さん、私を子供扱いしてますね」
「してないよ。心配はしているけど。はいプリン」
「やっぱり子供扱いをしてますね。いただきますけど」
「いるんだ?」
くっ!
万理さんの作るお菓子はどれも絶品だから食べないと言う手はない。
補足するとグルメの響も万理さんの手料理は大好きだった。
「食べたら営業に行ってきます。IDOLISH7のライブに使わせてもらう会場が見つかりましたので」
「俺も行くよ」
「え、一人で…」
「俺も行くから」
何故か押し切られてしまった。
でもこの時私は選択を間違えてしまった。
何が何でも断れば良かったんだ。
そうすればあんなことにはならなかったのに。