第3章 第二章新しい星の誕生
ここの看板メニューを頼みゆっくり話をすることにしよう。
「万理君。奏音君の事は聞いたかな」
「はい…後三か月で事務所を」
「驚かせてしまって悪かったね」
「社長の所為では…」
そうは行っても責任を感じてしまう。
僕ももう少し早く話しておけばよかったんだろうけど。
「彼には事情があってね、事務所で匿っていたんだ」
「匿う?」
「詳しくは言えないけど、彼は元々音楽活動をしていたけど。怪我をしてその後遺症で音楽活動を断念せざる得なかった…そしてその後音楽仲間が事務所を立ち上げてそこでアイドルのプロデューサーをしていたんだ」
「奏音君が…」
本当にかいつまんでしか説明はできない。
詳しい事情を僕から話すことはできないからね。
「でもそこで最悪な出来事が起きた。彼は才能あふれ、人柄も良い事が仇となってしまった」
「え?」
「嫉妬による嫌がらせと、酷いストーカー被害にあってしまってね」
「なっ…」
奏音ちゃんが精神的に追い詰められ傷つけられズタボロにされてしまった。
あの頃の彼女は思い出したくない程酷かった。
「小さな芸能事務所でスキャンダルは命取りだ。彼を脅迫して、その事務所のタレントを移籍させるように協力しろと酷い脅しをかけて来た…もちろんその事務所の社長は直ぐに彼を守ろうとしたが、相手は大手の芸能事務所だった」
立ち上げてま無しの事務所に抗う術なんてないだろう。
「優し過ぎた彼の下した決断は事務所を去る事だった」
「そんな…あんまりじゃないですか」
「ああ、彼は沢山のモノを奪われながらもその事務所とタレントを守ったんだ。音楽活動をできなくなった頃、意気消沈していた彼は自分の足で立ち上がったのに」
何度彼女から夢を奪えば気が済むのだろうか。
優しい人が傷つき、平気で他人を利用して踏みつける人間が得をする。
芸能界とは残酷な世界だ。
「幸いな事に彼が働いていたお店の店長とは僕と懇意な仲だったんだけど…あの容姿だからね」
ストーカー被害はまだ続いた。
だから事務所の手伝いをしながら、男装をして身を隠してもらっていた。
女性のままだと危ないと思ったし。
しばらく身を隠さなくてはならない本当の理由があるからだ。