第3章 第二章新しい星の誕生
【小鳥遊音晴side】
さてと。
どうしたものか。
翌朝、僕は万理君のマンションに向かった。
ドアの前に立ち遠慮なくインターフォンを押すと、待たされる事もなくドアが開けられた。
「えっ?社長」
「やぁ、おはよう…かなり参っているね」
顔色があまりよくなかった。
昨日は寝れていなかったのかもしれない。
遅くまで残業をしていたし。
「一緒に朝食でもどうかと思ってね」
「あっ…はい、すぐに準備します」
戸惑いながらも二つ返事をしてくれたので行きつけの喫茶店に向かう。
「あらお久しぶり!」
「ご無沙汰しています」
「いつ見ても素敵ね万理君!今日は奏音ちゃんも一緒じゃないの?珍しい」
ここの喫茶店の店長は僕とも顔見知りで、勿論奏音ちゃんとも懇意な付き合いをしている。
昔ながらの純喫茶でジャズコンサートをたまにしたり、小さな舞台にはピアノも置かれている。
そしてここで万理君と初めてお茶を飲んだ場所だ。
「マスター…」
「ごめんなさい。万理君と奏音ちゃんはセットだと思って…だって奏音ちゃんったら万理君が本当に大好きだもの」
「えっ…」
「そうだね。奏音君は万理君が大好きだね」
「律ちゃんと響ちゃんも万理君が大好きだけど」
確かに彼等も万理君が大好きだ。
彼は大人になってからある程度丸くなったけど、距離を保っている。
とは言え今は優しいお兄さんであるけど万理君にかんしてはすごく優しい。
「僕なんて今だに冷たいのに万理君にはすごく優しいもんね」
「そうなんでしょうか」
「そうそう、助手席に乗ろうとしたら首絞められるし」
「ええ!」
まぁ、僕が奏音ちゃんをだまくらかす形で事務所に留めおいたことを怒っているんだろう。
「音晴ちゃんも悪いのよ。手伝いなんて言って扱き使うから…あの子をまた芸能事務所に置くなんて…あんなことがあったのに」
「マスター」
「あ…もしかして万理君は知らなかったかしら」
マスターは意外そうだった。
万理君と奏音ちゃんを見ていれば過去の事も話していると思っていただろうけど。
「何時のモーニングセットをお願いします」
「ええ。奥の席へどうぞ」
さてと、優し過ぎる彼をどう慰めるか考えなくてはならない。